その1.方針・目標の明確化
働き方・休み方を改善する各種の取組や仕組みの起点となるのが「方針・目標の明確化」です。企業 のメッセージとして働き方・休み方の改善を促す方針・目標を発信することで、それぞれの取組・仕組 み・制度などが「ばらばらなもの」ではなく、「一貫したもの」として社員に認識されるようになり、 相乗効果を発揮する上で重要です。
また、働き方・休み方の改善を促す方針・目標は、単独で打ち出されるというよりは、企業が求める 社員像や経営方針、企業文化などと関連付けながら展開させる方が社員への浸透度が高まります。また、 運動、宣言、キャラクター活用など、さまざまな仕掛けを組み合わせることで、効果を高めている企業 もあります。
企業が求める社員像/経営方針等
整合性・一貫性が求められる
+
経営方針と関連付けながら展開 いくつかの活動を組み合わせる 効果を高めるためには…
働き方・休み方の制度/取組等
会社の方針や目標の明確化
取 組 例
○経営方針と関連付けながら展開
トップからの全社的目標の発信
(沖電気)労使による目標設定は、長時間労働の抑制については「1か月の時間外労働60時間超過者をゼロにす る」、休暇の活用については「1年間の年次有給休暇取得日数6日未満者をゼロにする」を掲げています。 イントラネットでは、この目標を掲載すると共に、トップメッセージとして社長および労働組合委員長 のメッセージを発信しています。さらに、半期ごとの経営方針説明会(社内)において、社長から「ワー ク・ライフ・バランス」の重要性について、経営方針と共に発信しています。
取組ポイントの紹介
『働き方改革』の推進
(キヤノン)「働き方改革」は、生産性向上とワーク・ライフ・ バランスの推進を目的として2012年に本格的に開始 した施策です。経営環境が激変する中においても企業 が成長していくためには、生産性の向上とワーク・ラ イフ・バランスの好循環・相乗効果によって、所定労 働時間内で最大の成果を出し、終業後には私生活の充 実を図ることが大切であると考えて推奨しています。 2013年には経営層から以下のメッセージが発信さ れています。
「社員全員が仕事の生産性を再度見直し、所定労働時間内で効率よく終われるよう、働き方を 見直して欲しい。終業後には、家族との団らん、自分をさらに磨くための勉強、あるいは趣味 を楽しむなど、人間らしい生活を過ごしてほしい」
「働き方改革」において、具体的な方針や取組内容は各部門で創意工夫して取り組んでいます。また、 部門を超えて好事例を水平展開する「生産性ハンドブック」の発行(全管理職に配信)や、働き方改革 ホームページの開設、全社横断ワーキンググループの発足等も実施しています。
社長メッセージの発信と事業所キャラバンを通じた現場への徹底
(日立製作所)長時間労働の更なる縮減に向けて、2008年より全社で数値目標を設定し取組を推進。取組開始にあ たり、全社員向けにワーク・ライフ・バランスの実現に向けた社長メッセージを発信しました。
また、労務担当役員と労政担当部長が直接事業所を訪問し、各事業部門の経営会議等で長時間労働縮 減の取組徹底を依頼し、また事業所幹部との意見交換を行う「事業所キャラバン」を実施しました。
○いくつかの活動を組み合わせる
『カエル運動』の展開
(シャープ)2013年5月から、会社を変える運動として「カエル運動」をスタートさせました。
○ コミュニケーションをカエル取組としては、役職・世代間の距離を縮めて自由闊達なコミュニケー ションを促す「さん付け運動」
○ 仕事のやり方をカエル取組としては、メタボ(ムダ)仕事を取り除いて効率をあげる「脱!仕事メ タボ運動(詳細はP24)」の他、「会議」や「メールマナー」改革としてそれぞれ10カ条を定めて見 直しを図っています。
はじめは本社主導でスタートしましたが、その後各事業本部や関係会社、部門 などでも、それぞれ自主的に目標を決め、独自の取組を推進しています。
その2.改善推進の体制づくり
一般社員の働き方・休み方を改善する運動や活動を持続させるために、また、新たに導入する制度や 仕組みを効果的に運用するために、企業内の組織や体制を整備することが重要です。
また、情報共有や計画づくりにとどまらず、有効に取組が行われたかどうかをチェックしたり、改善 を促す役割も期待されます。
体制としては労使で推進体制を構築している場合や本社全体だけでなく事業所ごとに設置する例が見 られます。この他、人事部内に設けるものや、横断的な組織として設けるものなども想定されます。そ の設置目的や企業の状況に合わせた体制を整備することが望まれます。
労使で推進体制を構築 事業所ごとに推進組織を設置 会社内の組織や体制を整備
運動や活動を 持続させる
取組の有効性や 効果をチェックする 新たに導入する
制度や仕組みを 効果的に運用する
取 組 例
○労使で推進体制を構築
年次有給休暇取得を労使共同で推進
(NEC)年次有給休暇については、取得日数5日未満の低取得者をゼロにすることを主眼に労使共同で取り組 んでいます。具体的には、低取得者本人には労働組合から、低取得者の上司には会社から、休暇取得計 画の要請を行っています。上司、部下双方に働きかけることで、職場が休暇取得計画についてコミュニ ケーションを取りやすくなる風土を作りあげることができました。
また、事業部門ごとに、毎月、労使委員会を開催し、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進に 関しての協議、情報交換を継続的に実施しています。
労使検討委員会を立ち上げて取組
(富士電機)労使検討委員会において、長時間労働の縮減に関して、特に月80時間以上の時間外労働極小化に向け た取組を推進することとしました。
また、2014年春季交渉においては、長時間労働の縮減と共に、年次有給休暇の取得促進等によりワー ク・ライフ・バランスの実現を図るべく、「労使の協議の場」を定期的に設け、取組状況のフォローを 行うこととしました。
多様な人材が働きやすく、能力を最大限発揮できる職場環境づくりを目指し、「働く時は働き、休む 時はしっかり休む」というメリハリのある働き方を目指す「働き方改革」と「仕事と仕事以外の生活の 両立支援」を重点課題に掲げ、労使で状況を共有しながら制度や社内風土の改善に取り組んでいます。
○事業所ごとに推進組織を設置
労働時間委員会の設置
(三菱電機)労働時間の状況を労使で話し合う「労働時間委員会」を事業所ごとに年2回行うようにしており、そ の話し合いをもとに、各事業の実情に応じた施策(一斉定時退社、深夜就業パトロール、休日労働管理 の徹底など)が行われています。
時短委員会の開催
(沖電気)各地区において、労使で労働時間や休暇の取得状況等について協議する「時短委員会」(名称は地区 によって異なる)を月に1度設けています。
その3.改善促進の制度化
企業全体あるいは特定の部署において、長時間労働が続くような状況、なかなか休みの取りにくい状 況が生じている場合はこれを改善する必要があります。改善の効果を高め、かつ、維持する上では会社 として制度を導入し、実施可能とすることが効果的です。労働時間を短くする、働く場所や働く時間を 柔軟にする、取得しやすい日に年次有給休暇日を設定する、まとまった休みを取りやすくするなどによ り、メリハリのある仕事の仕方を促し、心身の健康を保ち、社員の能力を発揮し生産性の高い仕事を行 えるようにすることが望まれます。
具体的な取組の内容としては、長時間労働の後にはしっかりと休養をとれるようにする、朝は早めに 出勤し、夕方に帰宅する「朝型」の働き方を促す、テレワークの導入により終日在宅勤務の機会を設け る、休みを時間単位で取得できるようにする、長時間労働となりがちな管理職を対象とした休暇制度を 導入するなど、実に多様です。
それぞれの企業の業務の内容や顧客の特性などに合った制度を導入し、運用することが大切です。
勤務間インターバル規制の導入 早帰りを促す(「朝型」の働き方など)
テレワークの推進 多様な休暇制度を導入(時間単位年休など) 新たな制度や仕組みを導入
長時間労働が続く なかなか休みが取りにくい
取 組 例
○勤務間インターバル規制の導入
社員の健康確保を目的とした勤務間インターバル制度
(NEC)社員の健康確保を目的として、勤務間インターバル制度を導入しています。深夜勤務者の救済措置で あり、積極的に利用されるべき制度ではありませんが、一定の休息時間を確保すべく、翌日の始業時間 を繰り下げることができる制度です。
23:30∼24:29に退社した場合は9:30に、24:30以降に退社した場合は10:30に始業時間を変更 することができます。
○早帰りを促す(「朝型」の働き方など)
ワーク・ライフ・バランス推進期間の継続的な実施
(キヤノン)東日本大震災時の電力供給量低下に伴い実施した就業時間帯の前倒しを、現在も継続して行っていま す。「働き方改革」の一環として、7月∼9月をワーク・ライフ・バランス推進期間として、始業時刻 を30分早め(本社8時)、昼休憩を15分短縮(休憩時間45分)することで、終業時刻を45分早くして います(本社16時15分)。
終業後の時間には、会社として語学や資格取得、健康などのセミナー・イベントを開催するなど、社 員に有効に活用してもらえるようにサポートしています。
もちろん、時短勤務制度の適用者等の勤務時間帯を変更することが難しい社員については個別に勤務 時間を調整しています。
定時退社日の徹底
(東芝)事業場毎に毎週1日を「定時退社日」に設定し、時間外勤務を行わずに定時で退社するよう、館内放 送等で呼びかけを行っています。
特に定時退社日の中でも毎月1日以上を「特別強化日」として、時間外勤務をせざるを得ない場合は 上長から事前に個別申請させ、当日終業時刻に労使がチームを組んで各職場を巡回し、未申請で勤務を 継続している社員がいないか確認しています。
○テレワークの推進
在宅勤務制度(e-Work@Home)の導入
(パナソニック)会社の設ける要件に合致する約4万人の社員を対象としてe-Work@Homeという在宅勤務制度を導 入しています。e-Work@Homeを用いて勤務する社員に対してPC貸与による在宅勤務を認める仕組み です。労働時間管理は通常通り実施しますが、各部門で工夫して対応を行うことを前提とした運用とし ています。
多様な働き方を目指した在宅勤務・モバイルワーク制度の利用推進
(富士通)現在、在宅勤務は、育児及び介護を理由として週2回の利用が可能で、約100人の社員が利用し、育 児・介護を行いながら企業に貢献していただいており、ライフイベントと仕事の両立に大きく役立って います。
今後は、育児や介護を理由とした在宅勤務に限らず、多様な働き方をさらに拡充したモバイルワーク のトライアルを予定しています。
○多様な休暇制度を導入(時間単位年休など)
“時間単位”の目的別休暇制度の導入
(沖電気)年次有給休暇とは別に、傷病治療や、家族介護・看護、ボランティア活動、子の学校行事などに利用 できる “目的別休暇”を毎年5日付与しています。年次有給休暇の失効分も年5日を限度に目的別休暇 に積み立てられます(最大で50日間積立可能)。
目的別休暇は、家族の看護、子どもの学校行事などに多く利用されています。
セルフサポート休暇制度の制定
(三菱電機)取得できなかった場合の年次有給休暇は「セルフサポート休暇」として、30日間を上限として積み立 てることができます。病気や怪我の療養や人間ドック受診、ボランティア・家族行事など、様々な目的 において使用が可能です。
管理職を対象とした長期リフレッシュ休暇制度
(オムロン)「長期リフレッシュ休暇」は、1988年に特別休暇として導入した、最前線の最も多忙な管理職に普段 できない方法で心と身体をリフレッシュしてもらう制度です。管理職昇格後6年目に1か月から最大3 カ月もの休暇を取得でき、原則として満53歳まで延期が可能です。
制度導入から20年以上が経過し、これまでに1,180人(対象者の約8割)が取得しています。本制度 を利用することで、見知らぬ国に行って生活してみる、地域のボランティア活動に参加してみるといっ た様々なテーマ、新しい体験をして、自分なりの新たな価値観を持つ社員が多く見受けられます。
また、その間部下も仕事を任され、成長する機会となっています。なお、制度の導入時には、取得促進 のために、休暇取得者の休暇の過ごし方の体験記等の情報提供、融資制度の活用促進等を実施しました。
生涯設計プログラムに基づく長期休暇のバリエーションの充実
(オムロン)社会の信頼に応える企業づくりには、担い手となる社員の存在が欠かせないと考え、社員一人ひとり が生きがい、働きがいを持てるように、さまざまな支援制度で成長をサポートしています。その一環と して、ヒューマンルネッサンス構想に「生涯設計プログラム」を設けており、人生の節目で立ち止まっ て自分や社会を見つめ直すことで、新たな「気づき」があり、自律へのきっかけづくりとなることを期 待しています。
長期休暇として満35歳以上を対象とした「マイチャージプラン(最長2週間)」、満45歳以上を対象 とした「マイビジョンプラン(最長4週間)」、満53歳を対象とした「マイライフプラン(最長2週間)」 を設定しており、生涯設計プログラムに位置付けています。対象者には特別休暇としてマイプラン休暇 (マイチャージ使用時:5日、マイビジョン使用時:10日、マイライフ使用時:5日)を付与するとともに、
各人の年次有給休暇および積立年次有給休暇(失効する年次有給休暇を積み立てる制度)を充当するこ とにより長期休暇の取得が可能となっています。
プログラム 対象者 ねらい 休暇期間
マイチャージ 35歳 自己実現に向けた人生設計を考える 2週間
長期リフレッシュ 管理職6年目 心・技・体のリフレッシュと新しい視野づくり 1-3か月
マイビジョン 45歳 自己の強みを踏まえた人生設計を考える 4週間
マイライフ 53歳(役員除く) キャリアの棚卸しと人生設計のリニューアル 2週間
フリーエントリー休暇制度を活用した計画的な有休取得の促進
(東芝)社員が年次有給休暇を計画的に取得するための施策として、「フリーエントリー休暇制度」を実施し ています。
この制度は、当年度の年次有給休暇が付与される際に、そのうち5日間を、予め「フリーエントリー 休暇」として取得予定日を登録しておくものです。
その4.改善促進のルール化
「社員の働き方・休み方の実態」とその企業の「人事管理のあり方」は深く関係しています。そのため、 人事管理に関する手続きの方法や運用のルール、人事評価の手法などを見直すことで、社員の働き方・ 休み方を変えられる場合があります。
たとえば、部下が長時間労働を行っている場合、実効性のある改善がなされるよう上司に具体的な改 善策を提案させている企業や、残業する当事者ではなく、その上司が残業申請を行う仕組みを取り入れ ている企業、あるいは、労働時間の長さで昇進・昇格の評価がなされることのないよう職務等級制度を 導入している企業もあります。
ポイント
☞
上司に働きかける 評価の仕組みを工夫する 改善を促進する「ルール」をつくる
手続きの方法や運用のルールや人事評価手法を見直す
社員の働き方・休み方が変わる
取 組 例
○上司に働きかける
残業する部下について上司が申請
(沖電気)【申請イメージ】
『本人と上司をセットで管理する』という点を重視
(NEC) 基本方針として「時間外労働ゼロ」を目標として掲げ、全社的に各種の取組を 実施しています。時間外労働が多い傾向 の社員に対しては月の途中でアラート発 信を行い、当事者に意識づけを図ってい ます。同時に、当事者の上司に、部下が 高負荷状態になりつつあるアラート発信 を行い、部下への業務アサインの見直 し、業務量の調整を促しています。
○評価の仕組みを工夫する
社員それぞれの職務・責任が明確な人事制度
(日本IBM)既卒はもちろん、新卒採用についても職種別での採用を行っており、入社1年目のトレーニング終了 後すぐに職務等級制度による人事管理を行います。
また、そのスキームを支えるのは、納得性の高い評価制度と目標管理制度です。職種(職務)は自身 のキャリア意識等により入社後に変更も可能です。また、部門を超えた異動は、本人が直接希望する部 門・職種のマネージャーと交渉して異動を実現することもできます。仕事の成果は、プロジェクトや実 務に対する貢献度で測られ、たとえば労働時間の長さ、残業を多くしているから等の理由のみによる 偏った評価は行われません。
②申請者が、申請に該当する部下の情報を選択、入力する。
③申請者(時間外勤務をする者の上司) が申請を行い、総務部門(人事部)、労働 組合が承認する。
その5.意識改善
長時間労働や休みが取れない状況が常態化している場合、長時間労働を「当たり前の状態」と思って しまう職場風土が形成されている恐れがあります。このようなときは管理職をはじめ社員一人ひとりの 意識を変えることが重要です。
そのための最も代表的な取組は「研修の実施」です。単なる情報提供型の研修ではなく、演習形式や 双方型の研修など、その方法を工夫することで効果を高めることが望まれます。また、eラーニングを 実施している企業やハンドブックなどの冊子を全社員に配布している企業もあります。
ポイント
☞
研修や講演会の 実施
e ラーニングの 実施
ハンドブックの 活用 社員一人ひとりの意識を変革
長時間労働や休みが取れない状況が常態化
長時間労働を「当たり前の状態」と思ってしまう職場風土が形成
取 組 例
○研修や講演会の実施
マネジメント研修における労働時間管理の徹底
(富士通)管理職に対するマネジメント研修を定期的に行い、労働時間管理の徹底を図っています。特に時間外 労働については、サービス残業をしない・させないことを最優先とし、その上で長時間労働を縮減する ための教育を徹底しています。
ワーク・ライフ・バランスに関する講演会開催
(富士電機)○eラーニングの実施
労働時間制度等の周知
(オムロン)労働時間制度等についてハンドブックやイントラネット上で情報提供を行って いますが、きっかけがないと社員が確認する機会は少ないため、全社員(管理職 向けと非管理職向け)に対して年に1回、働き方・休み方に関する制度について 確認する機会を設けています(10問程度のe-learning)。また、休暇制度につい ても、毎年3月に掲示板に通達を出して年次有給休暇の取得日数を確認するよう なきっかけをつくっています。
効率的な働き方についてe-learningを実施
(東芝)社員一人ひとりが仕事に取り組む意識と仕事のやり方を変え、 生産性を高め、効率的な働き方を実現するために、2014年度か ら社員全員を対象にe-learningを実施しています。生産性を向 上することの必要性を理解した上で、仕事の仕方や意識・コミュ ニケーションのあり方を学ぶとともに、メールやユニファイド・ コミュニケーション(様々な通信手段を組み合わせたコミュニ ケーション)等のITツールの活用方法についても解説を行ってい ます。
○ハンドブックの活用
ワーク・スタイルに関するハンドブックの作成・提供
(東芝)当社では、会社での業務において集中度を高め、「効率的でメリハリのあ る仕事」をすることにより、「リフレッシュ」する時間を確保することで「幅 広い教養と経験」を積み重ね、「付加価値の高い仕事」に結びつけ、これを さらなる「効率的でメリハリのある仕事」につなげるという正の循環を実践 することを「ワーク・スタイル・イノベーション」と呼んでいます。
チームとして効率的でメリハリある仕事を実現するための管理者・社員一 人ひとりのマネジメントのノウハウ、チーム・マネジメントの基礎知識とし て勤務制度の知識を広く周知し、社内の各部門における取組事例についても 共有するため、社内HPで紹介するとともに、ハンドブックを作成し、社員 全員に配布しています。
取組のフォローアップと事例展開
(日立製作所)長時間労働の縮減に向けた施策の定着化に向けて、時間外労働の状況や有給休暇取得状況を、本社経 営会議や各事業部門の総務部長が出席する会議等において定期的に報告を行い、数値目標の達成状況の フォローアップを実施。また、各事業部門の長時間労働の縮減に向けた取組を本社でまとめ、好事例に ついては全事業部門に展開しています。
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そ の 6 . 情 報 提 供 ・ 相 談
社員は、自分がどのような働き方・休み方をしているのか、他の社員と比べて問題のある働き方をし ているのかなどを適切に把握できていない場合が多く、改善を図らねばならない状況にあったとしても 自覚するのは難しいものです。また、仮に改善を図りたいと思っても、気軽に相談できる仕組みや体制、 窓口などがなければ行動に結びつけることは容易ではありません。働き方・休み方に関する社内の制度 についても、企業側は十分に周知していると思っていても、社員から見たとき必ずしも伝わっていない という場合もあります。そこで、情報提供や相談の仕組みを設け、取り組むことが重要です。
情報提供については、社員が個別に利用しているPCを通して情報提供を行っているケースが多く見ら れますが、対象者に個別に伝えているケースもあります。また、改善が求められる社員に対して面談の 機会を提供している企業もあります。
ポイント
☞
社員のPCを通して情報提供 対象者に個別に伝える
情報提供や相談を充実 社員は自分の働き方を
自覚していない
会社の制度が 周知されていない 気軽に相談できる
仕組みや体制、窓口など がないと行動には
結びつきにくい
取 組 例
○社員のPCを通して情報提供
勤務時間の適切な把握と情報提供
(東芝)○対象者に個別に伝える
勤務実績状況のメール配信
(東芝)「所定労働時間を超える勤務時間」の「当月実績値」が40時間、または60時間を超過した場合、社員 本人とその上司に翌朝「お知らせ」メールを自動送信しています。
また毎月10日に、前月と前々月の「所定労働時間を超える勤務時間」を集計した「月間勤務実績レポー ト」を上司にメールで自動送信しています。
上記の「PC ON/OFF時刻把握ツール」とあわせ、勤務状況について上司と社員が都度意識を向け、 より効率的な働き方を促すとともに、健康管理の観点から長時間労働への注意喚起を行い、改善を図っ ています。
時間外労働のアラートメールの送信
(富士通)労働組合と時間外協議会を毎月開催し、時間外労働の実態を把握するとともに、長時間労働の抑制に 取り組んでいます。また、月度末の結果のみで管理するのではなく、月の途中で「労働時間が長くなる おそれあり」とシステム上判断された場合、アラームが本人およびその所属長に自動的に送信される仕 組みを導入しています。また、当月100時間を超える、または月平均80時間を超える状態が続いている などの社員について産業医による面談を行うほか、前月の時間外労働が40時間を超えた社員は全員に問 診票提出を義務づけるといった健康管理施策を設けており、その通知についても、本人とその所属長の 両方に送信しています。
そ の 7 . 仕 事 の 進 め 方 改 善
そもそも業務量が多く社員が少ない場合、一人ひとりの業務の負荷は大きく、休みも取りづらい状況 が生じます。社員の人数を増やすか、業務の総量を減らせば問題は解決しますが、このような手を講じ られない場合もあります。そこで、業務の無駄を減らしたり、社員間の業務量の偏りを是正する取組が 重要となります。
受注段階や遂行段階の管理を徹底したり、業務の棚卸を行う、社員の知識や能力を効率的に活用する ために社員情報検索システムを導入する、繁忙期と閑散期の差が激しい企業や部署の場合に閑散期の休 暇取得に力を入れるなどの取組が見られます。
ポイント
☞
受注段階や遂行段階の 管理を徹底
業務の棚卸や
社員スキルを見える化 閑散期に休暇取得
仕事の進め方を改善
社員の人数を増やすか、業務の総量を減らすことができない場合
取 組 例
○受注段階や遂行段階の管理を徹底
長時間労働の抑制を目的とした受注段階・遂行段階での管理の徹底 (NEC)
プロジェクト事前審査を厳格化、契約内容の精査により、無理な計画で受注しないよう徹底していま す。また、予期せぬトラブルにより高負荷になった場合でも、上司だけでなくスタッフ部門による時間 管理等で健康確保措置を実施しています。
○業務の棚卸や社員スキルを見える化
業務効率化を推進
(富士電機)中期経営計画の達成に向けて、Pro-7活動(一層の収益力強化に向け、事業活動に伴うあらゆるコス トをゼロベースで見直す全員参加の活動)を通じて経営方針にある「チームによる総合力を発揮」によ り収益体質をより強固なものにすべく、働き方改革、業務品質向上に向けた業務効率化を推進していま す。具体的には業務の棚卸や業務プロセスの見える化などにより業務品質向上に向けた職場単位の活動 を行っています。
生産効率向上に資する社内情報検索システム
(日本IBM)専門性の高い情報については、社内検索システムから専門知識・スキル、ベストプラクティスなどを 保有する社員をグローバル規模で検索できます。情報をうまく活用できる社員・コミュニケーション能 力の高い社員は効率的に生産性高く働くことが可能です。
○閑散期に休暇取得
業務の繁閑による働き方・休み方のメリハリ (富士通)
そ の 8 . 実 態 把 握 ・ 管 理
働き方・休み方を改善するには、まず現状を客観的に把握する必要があります。また、何らかの取組 を始めたり、新制度を導入した場合には、一定期間の後、その効果を把握することが大切です。
社員が自分の働き方・休み方をどのように感じているのかを知ることは、課題を把握したり、新たな 取組を行う場合の基礎的な情報になります。そこで、実態を的確に把握し企業として管理を行うことが 重要です。
定期的に社員意識調査を実施し、その結果を現場にフィードバックしている企業や労使で情報を共有 化しているケースなどが見られます。
ポイント
☞
意識調査の結果を現場に フィードバック
労働組合と人事部が 情報を共有
実態把握および管理
取 組 例
○意識調査の結果を現場にフィードバック
社員意識調査を各部門の改善施策の立案・実行に活用
(東芝)社員全員を対象に、無記名方式による「社員意識調査」を毎年実施しています。社員の職場・仕事・ 上司・会社に関する生の声、および会社施策に関する理解度を把握し、働き方や労働時間・休暇制度等 を含めた会社諸施策への反映を行っています。
また調査結果は人事部門が管理するのではなく、それぞれの部門ごとに集計しフィードバックされま す。各部門では、部門における課題を抽出し、部員全員で話し合い、改善施策を立案・実行しています。
この調査はこれまで国内のみで実施してきましたが、2015年度からはグローバルに展開していく予 定です。